双極性障害(双極症)
うつ病で観察されるうつ状態に加えて、気分が過度に高揚する躁状態(仕事や学業などの社会的機能が損なわれる水準)ないし軽躁状態(躁状態に比して程度が軽く、社会的機能がなんとか保たれる水準)が発現することが特徴です。うつ状態で発症することが多いため、当初はうつ病と診断されることが不可避であり、診断が修正されるまで気分状態がなかなか安定しない患者さんが少なくありません。
気分が高揚した状態では、自分が病気であるという認識は乏しく、むしろ好調と考えていることが多いため、治療導入がしばしば困難となります。なお、「躁状態(ないし軽躁状態)というのは、うつ状態の反対だから、明るく陽気な気分になるのか」とお考えになる方がおりますが、実際にはイライラが目立つことが多く、反論されると容易に激高することもあります。
男性、40代前半(院長の医学的経験に基づき創作した事例)
【経過】30代前半より、うつ病の診断にて複数回の休職歴あり。
【上司相談】1週間位前から、急に様子が変わってきた。実験室を使うルールがないからと、自発的に作り始めたのだが、ルールを破ったら罰金10000円、等、不適切な内容が多々含まれていた。ちょっとやり過ぎではないかと同僚が返信したところ、「法を犯した者は償うのが当然だ」「そんなことを知らない奴は反社会的集団に入れ」と、不適切な返信を一斉配信した。また、上司全員に対して、「行き先掲示板を更新しないとは何事だ。正しく更新していない者は無断欠勤とみなす」と、上から目線のメールを一斉配信した。
面接して注意したところ、聞く耳を持たず、自分の過去の業績を列挙し、「自分のIQは150以上で、頭の回転が速すぎるから、凡人に合わせて2/3のスピードで話すのがストレスだ」などと話していた。
社内だけで留まっているならまだしも、客先に対して依頼もされていない提案書を、上司の承認も得ずに送りつけ、これは何ですかと照会が来てしまった。
【産業医面接】うつ状態で苦しんでいた頃を思い返すと、現在の自分は絶好調であり、従って産業医面接など受ける必要を感じない、はっきり言っていらいらすると話していた。休業療養を勧めたものの聞く耳を持たず、事業者が命令するに至って、ようやく受け入れた。
双極性障害を描いた映画
心のままに(1993)