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最初に用いた抗うつ薬の効果が不十分な場合、次の一手は?

[2026.05.03]

 うつ病患者さんに対して、抗うつ薬治療を行った場合、最初に行った抗うつ薬治療(十分な用量で4−8週)により元来の気分水準までの改善が得られる方の割合は、概ね1/3程度とされています。それでは、十分な改善が得られなかった患者さんについては、どのような治療方針が考えられるでしょうか。
 まずは、患者さんを2群に分けます。A. ある程度の改善が得られたけれど、元来の気分水準までには至っていない患者さんと、B. ほぼ全く改善が得られなかった患者さん、です。
 A群につきましては、最初に用いた抗うつ薬の増量を行います。その理由ですが、家を建てることをイメージして考えてみましょう。ある程度の改善が得られたのは、杭を打ち込んで土台を作って柱が立った、というような状態です。ここで薬を切り替えると、土台まで撤去してやり直しになってしまいます。増量すれば、工事がさらに進んで、屋根までできあがる(元来の気分水準まで改善する)ことが期待されます。そのため、増量を選択するのです。
 B群につきましては、抗うつ薬の切り替えを行います。ほぼ全く改善が得られていないということは、杭も刺さっていないような状態です。この状態で増量したところで、工事が進んで家が建つ見込みはほとんどありません。そのため、工法を変える(作用機序が異なるものに薬を変える)ことにより、新たに家の完成を目指すことになります。
 A群について、最初に用いた抗うつ薬を、添付文書で定められた範囲の中で、症状と副作用のバランスを見ながらできるだけ増量し、元来の気分水準まで改善すればよいのですが、改善しきらない場合があります。その場合は、切り替えると、これまでの改善効果まで失われてしまうおそれがあるため、最初に用いた抗うつ薬を続けたまま、抗うつ薬以外の薬剤を追加する(新たな工法を付け加える)ことにより、さらなる改善(家の完成)を目指すことを優先して検討します。この場合に付け加えられる薬には、新規抗精神病薬(統合失調症において幻覚や妄想を改善する薬剤)であるアリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、気分安定薬(双極症において気分を安定させる薬剤)である炭酸リチウム、甲状腺ホルモン剤などがあります。これらは、もともと別の目的で作られた薬ですが、抗うつ薬と組み合わせて使うことで、うつ症状の改善を助ける効果があることが、多くの研究で報告されています。
 「最初に行った抗うつ薬治療(十分な用量で4−8週)により元来の気分水準までの改善が得られる患者さんの割合は、概ね1/3程度」と聞いて、不安になってしまったかもしれませんが、そのような実状を織り込んで、治療上の対策が検討されています。あまり心配しすぎずに、治療を受けていただければと思います。

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