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2.すぐに服薬を中止しないこと

 うつ病で治療を受け、症状が十分改善した後、すぐに服薬を中止してしまう社員を、産業医を務めていた頃に多く体験しました。主治医の指示通り服薬している社員についても、なぜ服薬を継続しなければならないのか、その必要性を理解していない者が多数存在しました。服薬を続ける理由を認識していなければ、服薬を中止してしまうのも当然です。なぜ、病状が十分改善してからも、服薬を継続する必要があるのでしょうか?

 それは、症状が概ね消退(これを寛解と呼びます)したからという理由で、直ちに抗うつ薬の内服を中止した場合、再発率(医学的には再燃と再発という用語を使い分けますが、便宜的に再発とします)が上昇することが報告されているためです。

 過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析した研究(メタ解析)において、寛解後に抗うつ薬の服用を継続した群の再発率は20.9%であったのに対し、寛解後に抗うつ薬の服用を中止した群の再発率は39.7%と、2倍に及ぶことが判明しました(平均最大観察期間:42週間、個別の研究における最大観察期間:14-100週間)。なお、研究期間が様々なデータを統合解析しているため、平均最大観察期間時点における再発率とは言えないのですが、便宜的にそのように提示しています。

 この研究結果を知れば、なぜ寛解後も抗うつ薬の服用を継続しなければならないのか、理解することができるでしょう。

 また、この研究では、寛解後少なくとも半年以上は抗うつ薬治療を継続することが、再発を予防するために有用であることが示されました。効果を得るのに必要であった用量のままで(ただし副作用が問題となっている場合は減量を妨げない)、抗うつ薬の服用を6ヶ月間にわたり継続することが、再発予防の観点のみならず、再休業を避ける観点からも、非常に重要なのです。

 なお、再発を繰り返せば繰り返すほど、再発率が高くなることが知られているため、再発例においては、さらに長期間に及ぶ抗うつ薬治療が勧められます。

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